『養生訓』に学ぶ
『養生訓』
に学ぶ
2017.11.13「養生」という核である
養生論の書は漢文表記が多く、一部上流社会と知識層が主な読者であったが、『養生訓』は、著者が53歳の時に、中国の伝統医薬学、養生文化の文献の抜粋、読書記録として発表した漢文の『頤生輯要』をもとに、30年後にそれを再整理して庶民も読めるように平易な和文で書いたものである。そのためこの『養生訓』からは、養生文化の本質をそれまでよりも広くとらえ、その真意を可能な限り分かりやすく伝えようとする貝原益軒の情熱を感じ取ることができました。
『養生訓』は医薬学の専門書ではないにもかかわらず、医学、薬学分野に触れた内容を多く含んでいる。また、儒学、道学に関する内容、および仏教の学術的な視点、生命と健康、社会道徳と倫理についての価値観の由来と解説、さらに医薬学の領域を越えて病気にならないための注意事項として、健康を守る生活への効果的な行動や作法、有益な食材の使用方法や心の働きが健康に重要であることなどまで述べている。この多彩な記述に現れる貝原益軒の哲学的、伝統文化的、学術的識見は、ある一つの核から生まれている。それは「養生」という核である。
謝 心範 Ph.D.