アルツハイマー病と癌(がん)は互いに避け合う

癌(がん)になったことのある人はアルツハイマー病になりにくく、逆にアルツハイマー病の人は癌になるリスクが低いことが示された。医学誌「Neurology(神経学)」オンライン版に12月23日掲載された今回の研究は、米ワシントン大学医学部(セントルイス)のCatherine M. Roe氏らによるもの。

 同氏らは、大規模研究である心血管健康状態調査(Cardiovascular Health Study)のサブ研究に登録された65歳以上の被験者3,020人を対象に、認知症については平均5年間、癌については8年間追跡した。その結果、白人の被験者では研究開始時にアルツハイマー病であった人は癌により入院するリスクが69%低く、癌の人はアルツハイマー病になるリスクが43%低かった。マイノリティー(少数民族)の被験者では逆の傾向がみられたが、統計学的に有意なものではなく、脳血管性認知症と癌との間にはこのような関係は認められなかったという。
 米アルバート・アインシュタイン医科大学(ニューヨーク)のRichard Lipton博士は「アルツハイマー病によって、癌リスクが劇的に減少することが示された。この関連は極めて顕著なもので、予想外である」と述べている。
 また、アルツハイマー病と脳血管性認知症との間には関連性がみられなかった。脳血管性認知症は、脳への血液供給の損傷が原因であるが、アルツハイマー病と癌との関連には神経変性因子の関与が考えられるという。「パーキンソン病やアルツハイマー病はいずれも神経変性疾患であり、明確な理由なく特定の細胞が死滅する。一方、癌では特定の細胞が激しい分裂を始め、コントロールできなくなる。このため非常に大まかにみれば、選択的細胞死に関わる状態と、細胞の増殖に関わる状態との間に関連がみられるのは理にかなっている。神経変性疾患に罹りやすくなる生物学的因子が、細胞の分裂を防止している可能性がある」とLipton氏は述べている。
 Roe氏によると、過去のいくつかの研究でも同様の関連性が示されていたが、初期研究につきものの制約があり、例えば癌患者が単にアルツハイマー病と診断される前に死亡した可能性を否定できなかったという。今後は、アルツハイマー病と特定の種類の癌との間に関連があるかどうかを検討したいと、同氏は述べている。
[2009年12月23日/HealthDay News]