処方薬の共用は“害あって治癒なし”

処方薬を家族や友人に譲ることは危険な行為であることが、米フィラデルフィアで開催された米国公衆衛生学会(APHA)年次集会で発表された。報告によると、他人の処方薬を使用した人の25.1%が何らかの副作用を経験しているという。また、薬を譲られた人の77.3%は受診するのが面倒で代わりに薬剤を入手したと述べているが、3人に1人が結局は後に医療機関を受診していた。
研究を率いた教育メディア開発企業アカデミック・エッジAcademic Edge社(インディアナ州ブルーミントン)のRichard C. Goldsworthy氏によると、乱用を目的した「娯楽的薬剤共用recreational medication sharing」に関心をもつ人も多いが、具合の悪い人に余分に持っている薬を譲ってしまうという、いわゆる「利他的薬剤共用altruistic medication sharing」がこれまで見過ごされてきたという。同氏らは以前の研究で、米国でティーンエイジャーの20%が友人と抗生物質やアレルギー治療薬をやりとりしていることを報告している。今回の研究でも、米国で5人に1人が薬剤を共用していることが確認された。
このような行為は、薬剤の種類や用量によっては極めて重大な問題となることもある。米国薬物安全使用協会(ISMP)のAllen. J. Vaida氏によると、特に鎮痛薬などの共用には問題が多いという。ある事例では、首に痛みのあった6歳の少女に養母が余っていたフェンタニル(オピオイド系麻酔鎮痛薬)のパッチ剤を使用したところ、翌日ベッドで意識不明となっているのが発見され、救急治療室(ER)に到着する前に死亡した。このほか、点眼薬の共用により感染が拡大する、誤った抗生物質の共用により治療が必要になる、他人の抗不安薬の使用で運転中にめまいや眠気を生じるなど、予期せぬ害をもたらすことがあるという。
今回の研究では、訓練を受けた現地調査員が約2,800人を対象に1対1のインタビューを実施。他人の処方薬を譲り受けたことがあると回答した人の多くが、薬をくれた人から文書(54.6%)または口頭(38.2%)での注意や説明を受けておらず、後に受診した人の半数は、他人の薬を使用したことを医療従事者に話していなかった。今回の研究では副作用の重症度については明らかにされておらず、副作用そのものを求めていた人の数も不明だが、それでも副作用の比率から、有害リスクが現実にありうることが示される。
Vaida氏は、被害を避けるための教育の必要性を指摘し、医師、薬剤師および看護師が薬剤を共用しないよう患者に説明するべきだとしている。また、「地域の“回収”プログラムにより、薬棚に残った薬剤の処分を習慣付けることも必要である」と同氏は付け加えている。

[2009年11月11日/HealthDay News]