末期の認知症は精神面だけを侵すものと考える人が多いが、実際には広い範囲に影響を及ぼす致死的な疾患であることが新しい研究で示された。患者の家族が誤った認識をもっていると、負担のかかる不必要な治療を受けさせるなど、患者にはネガティブな結果となることがあるという。
研究著者で米ハーバード大学医学部(ボストン)准教授のSusan Mitchell博士によると、米国では認知症が主要な死亡原因の1つとなっているが、患者がどのような最期を迎えるかはほとんど知られていないという。「家族があらかじめ知識をもっていれば、患者に苦痛の少ない医療措置を受けさせることができる」と同氏は指摘している。米国では現在500万人が認知症に罹患しているが、40年後にはその数は3倍になると予想されている。
医学誌「New England Journal of Medicine」10月15日号に掲載された今回の研究では、認知症患者の終末期についての理解を深め、ケアを向上させるべく、22件のナーシングホーム(長期療養施設)で18カ月にわたる研究を実施。対象とした323人の患者は、家族を認識できないほか、6語以上話すことができず、失禁があり、全面的に介護に依存している末期の認知症患者であった。期間中に対象者の55%が死亡。死因となった合併症は肺炎が最も多く、次いで(肺炎以外の原因による)発熱、摂食に関わる障害が続いた。施設入居者の多くが息切れ(46%)、疼痛(39%)などの症状に苦しんでいた。
40%を超える患者が死亡前の3カ月間に少なくとも1回の大きな医療措置(入院、救急の利用、静脈栄養、経管栄養など)を受けていた。しかし、末期の認知症が死に至る疾患であり、合併症が起こりうることを家族が理解していた場合は、死亡前3カ月間に患者が負担の大きい医療措置を受ける比率が27%であったのに対し、家族の理解が不足していた場合は73%であった。
Mitchell氏は、家族と介護者の間のコミュニケーションを向上させるとともに、認知症患者にも癌(がん)患者と同じように質の高い緩和ケアおよびホスピスを利用できるようにする必要があるとしている。米インディアナ大学医学部(インディアナポリス)教授のGreg Sachs博士は同誌の論説で、「長期療養施設では疼痛治療が十分でなく、不必要な治療を受けるリスクも高い」と指摘。進行した認知症患者は他の疾患がなくてもホスピスケアを受ける資格があるとしている。また、「家族は診断後の早い段階で終末期ケアについて話し合い、早めにどうするかを決めておくのが理想的」と同氏は述べている。
[2009年10月14日/HealthDay News]